きょう1日をどう過ごすか子どもたちが決定…新しい学校の形“オルタナティブスクール”開校 保護者には学力に対する不安も「心が元気で、充実」

Published 2024-04-15
新たな選択肢の学校が出てきています。オルタナティブスクールという学校をご存じでしょうか?
 定義は定かではないのですが、これまでの公立学校と違い、民間などが独自の方針で運営し、様々な事情があって学校に行けない、行かない子どもたちが通うものです。
 不登校の子どもが通うフリースクールも含まれるとされ、オルタナティブスクールをうたう学校教育法で認可された私立もあります。
 なぜ子どもたちは通うのか、保護者がどんな思いなのか、新しくできた北海道内の現場を取材しました。

 北海道浦河町に住む田岡陽の出ちゃん(8)。
 春休みが終わり、この日から学校が始まります。
 小学3年生になった陽の出ちゃんが向かうのは…

 地元の公立小学校…ではありません。
 去年6月に開校したオルタナティブスクール「フレンド森のがっこう」です。
 オルタナティブとは「代わりの」という意味があり、不登校の子どもだけでなく、どんな理由でも通うことが出来ます。

朝のミーティング
「カエルを見たい、さっきタニシ捕まえたところ行きたい」

 朝のミーティングでは、スタッフの本宮(もとみや)さんと、話し合います。
 森のがっこうは、国語や算数など教科書を使った授業は行わず、子ども達が自分でやることを決め、自発的に行動することを重視しています。

 この日、子ども達が決めたのは、週に3回やってくるアメリカ人のクリスさんとのイングリッシュパーティーです。

 英語の歌を、歌詞カードを見ながら歌い、歌を通して英語と触れ合います。

 次は、子ども達の大好きな川遊び。
 陽の出ちゃんと楓ちゃん(8)が探しているのは…

「(何見つけたの?)タニシ」

 川の探索は、お手の物。
 一方、池に入ったのは小学2年生の武志(7)くん。

武志くん
「捕まえた」

 カエルを捕まえました。

子ども達
「やったー!」

 自然と目いっぱい触れ合った3人は、馬のエサ用にしようと、ふきのとうをとり、ビニールハウスに戻ります。

フレンド森のがっこう本宮万記子さん
「周りの人たちから見たら、ただ遊んでるだけにしか見えないんじゃないかと感じるところもあったんですけど、ここにいる子どもたちは自分たちで何が面白いか、自分はどうしていきたいかって常に自分や仲間の気持ちと向き合いながら、どんどん面白い話を展開していく。プロセスがあるなって感じたんです。なので今もう、子どもたちがやりたいって言えば思う存分、やってもらうようにして過ごしている」

 両親がいちご農家をやっている陽の出ちゃん。
 大人数に囲まれるのが苦手で、森のがっこうに来るまでは、小学校の支援学級に通っていました。

陽の出ちゃん
「ちょっと勉強やテストが難しくて、悩みすぎて、大変だった」

 支援学級に行けなくなってしまった陽の出ちゃん。
 そんな時、森のがっこうが開校し、通い始めてからは大きな変化があったといいます。

陽の出ちゃんの父 田岡秀幸さん
「もうガラッとすごい変わります。2年生のすごい嫌だ嫌だって言っていた学校よりも森の学校の方が、ものすごい行きたくて行きたくて、夏休みも冬休みも休みない方がいいっていうぐらい、すごい行きたがってましたね」

 絵が好きな楓ちゃんは、学校が終わると家でタブレットで絵を書くなどして過ごしています。

楓ちゃんの母 野田知絵さん
「ちょっとくらい掛け算やってみたらとか、漢字ちょっと書いてみたらとか、それは結構言う。」

 小学校とは、教育方針や、学び方は大きく異なるため、勉強に対する不安な気持ちは残っているといいます。

楓ちゃんの母 野田知絵さん
「同じぐらいの年齢の子とやっぱりできることがちょっと、勉強に関しては違うので、そこはやっぱり不安。っていうか心配だなって」

 ここでは、教科書を使った授業はせず、自然を活用しながら自分たちのやりたい活動を行うことで、主体性などを身につけることを重視しています。

 午前中、野山を駆け巡った3人。
 午後は、進級を祝うパーティーがしたいという楓ちゃんの提案を元に、日時や内容を話し合います。

楓ちゃん
「買い出しはみんなでしてもいいし、家でしてもいいし、たけしくん何食べたい?」

たけしくん
「キュウリ」

 積極的に意見を出す楓ちゃん。
 以前は、自分の意見を述べることが苦手でした。

楓ちゃん
「(小学校は)楽しかったけど、ずっと座ってるのが嫌だった。(森のがっこうは)森に行ったり、馬の世話も一緒にするから楽しい」

 一方、母親の知絵さんは、小学校での勉強をしなくてもいいのかという不安が残っていました。
 それでもなお、通わせている理由とは…

楓ちゃんの母 野田知絵さん
「すごく元気になったっていうか、何でも堂々とチャレンジできるようになった気はします。無理やり(小学校に)行かせても、全然いいことないっていうのは思ってるので、心が元気で、1日1日がすごい楽しくて充実してるってすごい良いことだなって思うから、それを一番にしたい、子どもにとって」

 最後は、活動の振り返り。
 昨日の自分と比べて出来るようになったことを発表します。

陽の出ちゃん
「今日のレベルアップポイントは?」

楓ちゃん
「レベルアップポイントは5です、なぜかというと…カエル触れるようになったから」

陽の出ちゃん
「じゃあ皆さんまた明日、さようなら」

 「明日も楽しみ」と口にしながら、学校をあとにします。

陽の出ちゃん
「もっちゃん、バイバイ」

 「オルタナティブスクール」は新たな選択肢の学校として、少しずつ広がっています。

 北海道内でもオルタナティブスクールをうたう学校は、この2年間で札幌市や上川町、長沼町でも設立されています。

 子どもの自主性を大切にしながら独自の教育方針で子どもの成長を促す「オルタナティブスクール」。

 「フレンド森のがっこう」の伊原康史(いはら・やすし)代表は、子どもの幸せが1番、勉強は2番という考えのもと、諦めない力、考える力など成績やテストといった数字では表すことの出来ない能力を養う場所にしたいと話しています。

 また「フレンド森のがっこう」では、大学の教授などを招いて特別開校日を設けたり、海外の子も参加出来る体験会や留学を受け入れているということです。

 なお「フレンド森のがっこう」に通う子どもたちは、もともと通っていた小学校に在籍したままで、現在は欠席扱いとなっています。
 北海道教育委員会は「フリースクール等の教育施設は学校に通えない子どもにとって重要な役割を果たしていると思う」と理解を示す一方、オルタナティブスクールの実態は把握しきれておらず、今後は道教委としての対応を検討する」としています。
 
 教育の歴史に詳しい日本大学法学部の香川七海准教授は、「従来の、不登校の子が通うフリースクールだけでなく、新たな学びの場を作るべきだと考える人が増えている、今後も全国でオルタナティブスクールのような教育施設は増えていくと思う」と話しています。

(堀啓知キャスター)
 子どもたちにとって選択肢が増えることになるオルタナティブスクール。
 日本の教育にどんな変化をもたらすか、今後も注目です。2024年04月15日(月) 19時22分 更新

#北海道 #ニュース #HBC

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