【脳科学の達人】土谷 尚嗣【第38回日本神経科学大会 市民公開講座】

Published 2016-02-10
第38回日本神経科学大会市民公開講座「脳科学の達人」
www.neuroscience2015.jnss.org/open_lecture.html

【要旨】脳と意識にはどのような関係があるのだろうか? この問題は、マインド・ボディ・プロブレムと呼ばれ、過去何千年にわたって哲学者が論じてきた問題だ。脳と意識の関係性と言われると難しいかもしれないが、この問題の本質を考えるきっかけは、日常に多く転がっている。 私たちが死ぬ時には脳の働きがなくなるはずだが、そのとき意識はどうなるのか? 眠る時と同じように意識がなくなるのか? 自分の感じる痛みや匂いはなぜ脳から生じるのか? どういうメカニズムが音の感覚を生み出し、なぜ音と光は異なって感じられるのか? 自分が飼っているネコや犬も私たちと同じように魚や肉を味わっているのか? 虫もそうか? 木や草は? 賢いロボットは?
脳と意識の関係性という問題に対しては、根本的な答えが見つからないと考えている哲学者や科学者なども世界に多くいる。しかし、この25年間にわたる、神経科学による意識研究の進展はめざましく、多くのことがわかってきた。意識にのぼる神経活動とのぼらない活動の違い、意識と密接な関わりがある様々な心理現象(自意識、注意、記憶など)と意識の関係など。最近では、コペルニクスのようにこれまでの常識をくつがえす、今までの意識に関する脳科学的知見を統合する理論も提唱されている。 大きな進展の一方で、まだまだ脳と意識の関係性にはわからないことも非常に多い。マインド・ボディ・プロブレムを身近に感じてもらい、今後の意識研究の動向に興味を持っていただけたなら、私のトークは成功だ!

【演者プロフィール】京都大学ではラクロスに明け暮れる中、脳に関する本を読みあさる。大学3年の時にアメリカの研究室をアポ無しで訪れ、様々な教授に世界的に成功する科学者にはどうなったら良いのかを聞いて回る。カリフォルニア工科大学でマーク・小西教授に「大学院でアメリカに来なさい」と言われ、留学を決める。受験したすべての大学院に落ちるも、裏口入学(!)に成功。カリフォルニア工科大学で10年を過ごしたあと、JSTさきがけを経て2012年からオーストラリア、モナシュ大学にて准教授。

【企画】日本神経科学学会 神経科学教育委員会(宮川剛, 御園生裕明, 松元健二, 富田泰輔, 矢尾育子, 豊田淳, 小清水久嗣)
【主催】日本神経科学学会
【共催】文部科学省/新学術領域研究 包括型脳科学研究推進支援ネットワーク
【助成】科学研究費(研究成果公開促進費)助成事業 *この事業はJSPS科研費15HP0034の助成を受けたものです。
【協賛】理化学研究所 脳科学総合研究センター 神経情報基盤センター, カクタス・コミュニケーションズ, 宮崎 敦子(理化学研究所, 井出 音 研究所)
【音楽】一色このみ

*演者・関係者の所属などの情報は企画開催時のものです。

All Comments (21)
  • @TK-un6yp
    子どもの時はみんな同じことを考えてたのに、考えつづける人とやめちゃう人はどのへんで別れちゃうんだろう
  • @zuizuitop8585
    土谷先生のお話、おもしろいです。 概況欄の紹介欄のエピソードもおもしろいし、服装やお話の仕方にも惹かれました。
  • @ladygrey7942
    とてもワクワクして聞いていました。 私も昔、友人に「この青ってどんな青?」って聞いた事があって… そもそも、青じゃないかもしれないけど、もし友人が青に見えていたら、私の事を色盲かと思うかもしれない。と思い、この質問にしたんですが…友人の答えは「えっ?普通の青だよ!」と言われて…? 余計に疑問でした。1+1=2というのも「何故2?」とか数学の計算式とかもとても疑問でした。 友人に聞いても、答えは「決まりだから」と言われて… 私は「変わった子供」のレッテルを貼られて… この動画を見ていて、少し理解が出来ました。ありがとうございました。
  • @user-uk6ec4uy1p
    とても興味のある面白い研究ですね。私も子供の頃絵を描いて居て色に対する感覚って本当に皆んな同じなのかしら?と考えたりしましたが此れに誰も興味を持ってくれなくてつまらなかった感じでした。 お話の中に笑いが入って居るのはとても良いと思います。脳がリラックスして話をどんどん聞いてゆけます。生真面目な説明は脳が疲れると経験するのは私だけでしょうか? 兎に角有り難うございました。
  • @user-gf3km2ut6i
    人工意識=ペルソナと捉えました。意識に興味あります、今後のスピーチも楽しみにしてます♪
  • @mizumori_natsu
    左耳からしか聴こえない🦻 ヘッドホンだと
  • @HK-gu4wi
    昔、アメリカの脳専門のお医者が植物人間になって、数年して起きたそうです。その体験を本にしてましたが、植物人間の方も『誰かが来て、世話をしてくれている』『この人は家族だな』とか分かるそうです。いわゆる第六感的な 感覚みたいです。植物人間の方をどう扱うのか、家族としては難しいですが、私は生きているとしたいです。
  • @user-ip2jj7zb1q
    意識というものを意識したことが無かった。
  • 自分も丁度中学生の頃、帰り道で色の認識は人それぞれ違くても証明できないよなぁ等妄想に耽る事がありましたね…
  • @rechab9698
    「ジョニーは戦場へ行った」という映画を思い出しました。
  • @hisa2166
    それぞれに感じる見える、美しさとは、何なのでしょう。 美しさの賛同数が偏るのは、洗脳ですか?こどもの頃から、こういうのが美しいのですよ、と大人達に言われ続けて育ちました。例えば、輝く星や月や花や清流や紅葉や目鼻立ちの整った人やチャリティーに熱心な人等に対して、多くの人は美しいと言います。 もし、何の情報も無いままで育ったら、私は素直に心の底から美しいと思えるものが、本当は何なのだったのかなと思いました。
  • @DADA530i
    私も小学生の時から、トイレの便座に座るたび、自分という意識って何だろう?と思ってました。でも、デカルトの言った、『我思う、故に我在り』に結局は行きついてしまう。この頃からスポーツを始めたので脳科学の道に行けなかったのですが、未だに人類は身体の事を全て知るには至らないのですよね。個人的には意識が芽生えるのは、五感から入る情報がある一定のレベルに達した時に生み出されるものなのだろうなと感じてます。お母さんのお腹からこの世に生まれた瞬間から、恐らくは聴覚からの情報から蓄積され、視覚、嗅覚、触覚、味覚へと進む。このどれかが無くとも意識が形成される情報量を満たした時に意識が芽生えるのではないかなと。確かに人間の脳は他の動物に比べ大きい。でもやはり、我思う、故に我在り、に行きついてしまいます。
  • @moose1212
    先生、ぜひ、釈迦の研究にもアプローチして欲しいです。釈迦も、似たような話をしてます。